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腫瘍マーカー

がんは、身体のあらゆる部位に出来ますが、全身に出来るがんの中には、“腫瘍マーカー”とよばれる物質を作り出すものがあります。体液(おもに血液)の中に含まれる“腫瘍マーカー”を測定することで、がんの有無や進行度、治療効果などを、ある程度は把握することができます。

“腫瘍マーカー”とは、がんの可能性を示す指標

“腫瘍マーカー”を作り出すのは、ある程度、病状が進行しているがんです。現在のところ、早期がんの発見に役立つような“腫瘍マーカー”は見つかっておらず、病状の進行度を判定するとき、あるいはすでに行っている何らかの治療の効果を見極めるようなときに、検査が行われることが多いようです。
“腫瘍マーカー”は、何らかのがんが疑われる場合、診断に至るまでの1つの手段として、その値を測定します。検査の結果、体液(血液)中の“腫瘍マーカー”の値が高いほど、特定のがんを発症している可能性が高くなります。ただし、“腫瘍マーカー”は、あくまでも「特定のがんを発症している可能性」として、捉えられるものです。特定の“腫瘍マーカー”が一定以上の数値を示している場合は、さらに詳しい検査を行い、確定診断を行う必要があります。

“腫瘍マーカー”にはどのような種類があるのか

現在、実際の臨床現場では、多くの“腫瘍マーカー”が、がんの可能性を示す根拠として使われています。1つの“腫瘍マーカー”が複数のがんの可能性を示すことがありますが、一方で、複数の“腫瘍マーカー”を作り出すがんも存在していることが分かっています。一例を挙げてみましょう。



<NSE(神経特異エノラーゼ)>
肺小細胞がん、神経芽細胞腫、褐色細胞腫、甲状腺髄様がん、などで高値となる。病状が進行すると上昇するといわれており、臨床的な経過観察に利用される。肺小細胞がんで60~80%、小児の神経芽細胞腫で70~80%の陽性率を示すことがある。

<SCC(扁平上皮がん関連抗原)>
各種扁平上皮がん(食道がん、子宮頚がん、皮膚がん 、肺がん、頭頚部がん)などで高値となる。がんを発症していない人(正常者)の血液中にもわずかに存在するが、正常な扁平上皮組織と扁平上皮がん組織の、SCC抗原を作り出す能力には、明らかな違いがあるため、扁平上皮がん患者の血液中からは、高濃度で検出される。

<CA 125>
卵巣がん、膵臓がん、胆道がんなどで、高値となり、特に卵巣がんの腫瘍マーカーとしての有用性が高い。卵巣がんでは約80%、膵臓がんでは50%の陽性率を示す。ただし、CA125を作り出す能力は、エストロゲンにより亢進するため、性周期に伴って変動する(月経時や妊娠初期で上昇、閉経後は低下する)。

<CA 15-3>
乳がんなどで高値となる。「乳がんの代表的腫瘍マーカー」である。原発性乳がんと比較すると、転移性乳がんや進行性乳がんでの陽性率の高いため、再発の予知や治療効果の判定に利用されている。再発乳がんは、肝肝臓や骨へ転移するケースが多くみられるため、CEA、NCC-ST-439などと組合せることがある。

<CA19-9>
膵臓がん、胆道がん、胃がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がんなどで、高値となる。糖鎖抗原の一種であり、がんを発症していない人(正常者)でも、微量に検出される。特に膵管、胆嚢や胆管、胃、唾液腺、結腸、前立腺などの上皮細胞に多くみられ、これらの組織ががん化することで、大量に作り出されるため、血液中の検出値が上昇する。

<CEA(がん胎児性抗原)>
胃がん、膵臓がん、胆道がん、肺がん、乳がん、大腸がんなどで、高値となる。CEAは、分子量18~20万の糖蛋白で、皮膚、食道、胃、大腸、胆嚢、胆管、膵、乳腺などの正常な組織にも、若干のCEAが認められる。しかし、がん細胞でのCEA産生力は高くなり、血液中のCEA値は進行度によって上昇する。

<AFP(α-フェトプロテイン)>
肝細胞がんなどで、高値となるが、成人の慢性肝炎、肝硬変、急性肝炎、劇症肝炎の回復期、卵黄嚢腫などでも上昇する。腫瘍マーカーとしては、肝細胞がん、肝芽腫、転移性肝がんなどで、診断や治療効果の評価に利用されている。

<CYFRA(サイトケラチン19フラグメント)>
肺がん(特に扁平上皮がん)などで高値となる。肺非小細胞がんでは特異的に検出されることが分かっており、特に扁平上皮がんでは、SCC抗原よりも高い陽性率を示す。腺がんではCEAと同程度、かつSCC抗原よりも高い陽性率を示すことなどから、治療効果のモニターとして利用されている。

<SLX(シアリルLex-i抗原)>
肺がん(特に腺がん)、膵臓がん、胆道がん、卵巣がん 大腸がんなどで、高値となる。各種がんの診断、経過観察、治療効果の指標として利用されている。

<ProGRP(ガストリン放出ペプチド前駆体)>
肺がん(肺小細胞がん)などで高値となる。肺小細胞がん細胞が作り出す物質で、がん細胞の破壊により血中に出てくるNSEよりも、進行度が早い時期に、血液中に放出される。

<NCC-ST-439 >
膵臓がん、大腸がん、乳がんなどで、高値となる。膵臓がんで60%、胆道がんで50%、大腸癌で30~40%、肝臓がんで30%など、主に消化器系のがんで高値となるほか、乳がんで40%以上が陽性となる。また、慢性膵炎、肝硬変、慢性肝炎などでは、疑陽性となることもある。

<STN(シアリルTn抗原)>
肺がん、胃がん、膵臓がん、卵巣がん、大腸がんなどで高値となる。卵巣がんでは血液中に多くみられる一方で、対応する産婦人科系の非悪性腫瘍の偽陽性率が低いため、がん特異性が高いといわれており、卵巣がんではCA125 と併用することで、診断効率が高くなる。

<hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)>
卵巣がん、精巣腫瘍などで高値となる。もともと、正常な絨毛組織(受精卵が着床して発育する組織)分泌される物質で、妊娠初期に高値になることから、妊娠の判定に利用される。しかし、上記のでも高値となることが分かっており、がんの進行度や治療効果判定に利用される。

<PSA(前立腺特異抗原)>
前立腺がんで高値となる。“腫瘍マーカー”の中では、もっとも優れた組織特異性を持ち、前立腺がんの早期発見や再発の発見に利用される。ただし、前立腺肥大や前立腺炎、尿道刺激(内視鏡カテーテルなど)後24時間以内に軽度上昇することもある。


腫瘍マーカー”の値が高いからといって、必ずしも特定のがんを発症しているとは限りません。一方で、ある程度がんが進行していても“腫瘍マーカー”が高値を示さないことがあります。“腫瘍マーカー”は、体液(血液)中にわずかに含まれる成分を調べる検査ですので、がん以外の疾患や身体の状態、例えば、生活習慣や食生活、ストレスの有無や強さなどに影響を受けることがあるのです。

腫瘍マーカー”とがん細胞との関係

多くの“腫瘍マーカー”は、がん細胞からだけではなく、正常な細胞でも作り出す物質です。しかし、がん細胞の方が、正常な細胞よりも成長が早く、より多くの物質を作り出します。つまり、特定の物質がより多く存在しているならば、それを作り出すであろうがん細胞が、身体の中に存在している可能性が高い、と捉えられるものです。
例えば、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)とよばれる“腫瘍マーカー”は、絨毛とよばれる、妊娠初期の子宮の内側にできる組織から作り出されていますので、妊娠しているかどうかの判定にも利用されています。正常な妊娠であれば、hCG値が高値となり、かつ超音波検査で子宮内に胎嚢(赤ちゃんが成長するための袋のようなもの)が確認されます。
しかし、子宮外妊娠や胞状奇胎でも高くなりますし、侵入奇胎や、絨毛がんとよばれるがんでも高くなります。hCGが高値であるにも関わらず胎嚢が確認できなければ、子宮外妊娠が疑われます。また、hCGが高値であり、超音波検査などによって異常な画像が認められれば胞状奇胎が疑われますし、妊娠終了後にhCG高値が続く場合は、侵入奇胎、絨毛がんなどが疑われます。このような場合は、より詳しい検査を行うことで、がんの有無や進行度を調べていくことになります。
このように、“腫瘍マーカー”は、「がん細胞が作り出す物質、または体内にがんがあることに反応してがんでは無い細胞が作り出す物質のことで、これらが組織、体液(主に血液)、排泄物などに含まれていることを検出することで、がん細胞の存在、がん細胞の種類、がんの進行程度を知る上の目印となるもの」なのです。

腫瘍マーカー”はいつ頃誕生し、発展してきたのか

世界で最初の“腫瘍マーカー”は、「ベンス・ジョーンス蛋白」と呼ばれる物質で、骨髄腫患者の尿中から発見されました。1848年のことです。その後、「がん細胞は何か特別な物質を作り出すのではないか」という推論の下で研究が進み、解糖系酵素、血清たんぱく、活性 ホルモンなどが注目され、hCGなどの“腫瘍マーカー”が発見されました。
その後、時は流れて1960になると、肝臓がんマウスの血中からAFPが、大腸がん組織よりCEAが発見されました。これらの“腫瘍マーカー”の測定方法が広く普及するようになると同時に、新しい診断方法も確立されるようになり、“腫瘍マーカー”の検査は、臨床検 査として不可欠なものとなりました。
さらに1970年代後半になると、「モノクロームナル抗体」と呼ばれる人工抗体(マウスなどの免疫細胞から作り出される、特徴的な抗体)の作製方法などの技術が確立されました。現在でも、この技術を応用して検査を行う“腫瘍マーカー”があります(CA19-9 など)。
その一方で、“腫瘍マーカー”となる物質の特徴、これらを作り出すがん細胞がもつ特徴、世界の各国で測定技術等が進歩したことなどから、標準的な測定方法、試薬、基準値などの標準化が、世界共通のものとしては進んでいない部分があります。

では、日本国内に限ってはどうでしょうか。例えばAFPの測定方法、測定可能なキット類、試薬(試料)などが複数存在しています。しかし日本国内での標準化は進んでおり、どの検査キットや試薬(試料)を使っても、同じ測定値が出ることが分かっていますので、日本国内で検査を受ける場合は、どの医療機関でも共通の検査結果がでると考えて良いでしょう。しかし、全ての“腫瘍マーカー”が国内での標準化が進んでいるわけではなく、中には、来将来はキット化するにあたり、試薬と測定技術の標準化が必要、とされているものもありますので、自分が検査した“腫瘍マーカー”は何か、その結果から考えられる病状はどのようなものか、医師から十分な説明を受けましょう。

“腫瘍マーカー”の検査値はこう読む

“腫瘍マーカー”は、それぞれの持つ抗原の性状から、以下の4つに分類されています。
1. がん胎児性抗原:本来は胎児期に存在する成分だが、細胞のがん化により、再び産生されるようになる
2. がん関連抗原:がん細胞の遺伝子異常や代謝の変化などにより作り出される
3. 酵素:細胞のがん化により、本来の酵素とは異なる酵素が作り出される
4. ホルモン:ホルモン産生臓器にがん細胞ができる場合と、元来はホルモンを産生しない臓器にがん細胞ができる場合がある
例えば、前述のhCGなどは「ホルモン」に分類されますし、前立腺がん特有と考えられているPSAは「がん関連抗原」に分類されます。

“腫瘍マーカー”の検査を行う医師は、漠然と“腫瘍マーカー”の種類を指定しているのではなく、患者さんそれぞれの状態に合わせて、検査を行っています。がんの種類を特定したい場合、ある程度がんの種類が特定された上でその進行度を調べる場合、進行したがんに対する化学療法や放射線療法などの効果を調べたい場合、などです。
“腫瘍マーカー”の閾値(しきいち:境界となる値のこと)は、たくさんの人(正常な人、および対象となるがん患者さん)の、体液(血液)などの測定値を元にして、決められています。しかし中には、がんが存在しないにもかかわらず、“腫瘍マーカー”の値が高くなる人がいます。一方で、がんが存在するにもかかわらず、“腫瘍マーカー”の値が、高くならない人もいます。また、“腫瘍マーカー”の値の変化が、正確にがんの状態を反映しているとも限りません。例えばある“腫瘍マーカー”の値が10上昇しているからといって、必ずしも特定のがんが10進行しているわけではないのです。

“腫瘍マーカー”は、あくまでも「特定のがんが存在している可能性を示している」ものです。 “腫瘍マーカー”の検査値の変化のみで、がんの存在、がんの進行度や回復度が、判断できるものではありません。“腫瘍マーカー”の検査値について疑問がある場合は、なぜこの検査を行うのか、検査の結果が何を示しているのか、担当の医師にしっかりと相談することが必要です。



<参考資料>
国立がん研究センター がん情報サービス 腫瘍マーカー
独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 腫瘍マーカー(臨床検査科) 1.腫瘍マーカーとは
広島区医師会 平成24年4月15日発行 広島市医師会だより (第552号 付録) 腫瘍マーカーの測定~その臨床的意義と効率的活用法~
東邦大学医療センター 大橋病院 婦人科 絨毛性疾患について
公益社団法人 日本産科婦人科学会 日産婦誌59巻11号


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