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免疫チェックポイント阻害剤(nivolmab:商品名 オプジーボ)

わが国のがん治療において、注目を集めているお薬の1つが「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる新薬です。ここでは、日本で現在承認されて使用されている免疫チェックポイント阻害剤のうち、抗PD-1抗体薬(商品名:オプジーボ)について解説します。

オプシーボ®は、高額な薬剤?

オプシーボ®は、2014年7月に、世界に先駆けて、悪性黒色腫に対して承認されたお薬で、2015年12月には非小細胞肺がんも適応となっています。オプシーボ®は当初、薬価(お薬の値段)が非常に高価だったことでも注目を浴びました。保険適応の範囲が広がり、対象となる患者さんが増えたことで、日本の医療費を圧迫したともいわれています。
もちろん、高額となるにはそれなりの理由があったのですが、海外での薬価や、日本の社会情勢を踏まえ、2017年2月から、薬価がおよそ50%引き下げられることになりました。

オプシーボ®に期待される効果の原理・仕組み

体内にがん細胞があると、免疫細胞の1つである「T細胞」細胞が、PD-1という物質を作り出し、がん細胞を攻撃します。しかし、がん細胞も攻撃をされないようPD-L1というタンパク質を作り出します。PD-L1はT細胞のPD-1と結合してしまうと、免疫機能にブレーキをかけてしまうため、がん細胞を攻撃することができなくなります。
そこでオプシーボ®を使用すると、体内でがんを攻撃する免疫細胞、T細胞が作り出すPD-1という物質に、オプシーボ®が結合します。これにより、PD-L1とPD-1が結合できなくなり、T細胞は免疫機能を落とすことなくがん細胞に攻撃し、がん細胞の増殖を抑制することができます。つまり、オプシーボは免疫機能にブレーキをかける物質にピンポイントで作用し、T細胞ががん細胞を攻撃する力を高める、いわゆる免疫力を高める薬剤ということになります。

(白山通りクリニックより抜粋)

オプシーボ®による副作用

従来の抗がん剤治療では、がん細胞だけではなく、正常な細胞も攻撃してしまうことがあり、副作用が強く出てしまうという欠点がありました。では、このオプシーボにはどのような副作用があるのでしょうか。
オプシーボの添付文書には以下のような副作用が記載されています。

【頻度が高いもの】

・リンパ球や白血球の減少 
・下痢 
・疲労
・白斑、皮膚の色素減少
・皮膚の掻痒感

【頻度は高くないが重篤な疾患】

・間質性肺疾患
初期症状として発熱や疲労、痰の出ない咳、息切れや呼吸困難感が出現します。過去に間質性肺疾患やそのほか肺の病気、肺の手術後の人や呼吸機能が低下している人は注意が必要です。また、60歳以上の方もかかりやすいため注意が必要となります。

・重症筋無力症、筋炎
  見られる症状として繰り返しの運動で疲れやすくなる、筋肉痛になる、足や腕に力が入らない、瞼が重い、物が二重に見えるがあります。

・1型糖尿病
見られる症状として多飲多尿(水をたくさん飲み、たくさん尿が出る)、喉の渇き、体重減少、吐き気や嘔吐があります。また、症状は急速に進行する場合があり、吐き気や嘔吐が見られてから1週間前後で意識消失にまで陥る可能性もあります。

・肝機能障害、肝炎
  見られる症状に疲れやすくなる、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)があります。

・大腸炎、重度の下痢
初期症状として下痢、排便回数(軟便)の増加、腹部を押した時の強い痛み(圧痛)や腹痛、血便とこれらの症状に伴って発熱が見られます。他にも吐き気や嘔吐などの症状も見られます。

・神経障害
  見られる症状として手足のしびれや痛みの他に思ったように体が動かせない(運動麻痺)や触った感覚が分からない(知覚障害)があります。

・眼障害
見られる症状に視野が欠ける(視野欠損)、視力の低下があります。

・副腎障害
見られる症状に吐き気や嘔吐、胃のむかつき、食欲不振や体のだるさがあります。また、副腎障害が急に現れた場合は意識が薄れるということもあります。

・腎障害
見られる症状に血尿、発熱、浮腫み、貧血、尿量の減少、尿が出にくくなるがあります。

・甲状腺機能障害
  見られる症状として疲れやすくなる、急激な体重増加あるいは減少、便秘、脱毛、悪寒、物忘れがしやすくなる、いらいらするというようなものがあります。

・重度の皮膚障害
見られる症状に発熱、身体のだるさ、皮膚のかゆみ、水膨れ、発疹、粘膜のただれ、口内炎、まぶたや目の充血が見られます。

・静脈血栓塞栓症
  静脈を血の塊がふさいでしまうことにより症状が出現するため、ふさぐ部位によって症状が変わります。肺の血管をふさいだ場合、胸の痛みや息苦しさ、口唇や手指が青紫になり冷たくなります。下肢の静脈をふさいだ場合、むくみや腫れが出現します。

・脳炎
見られる症状に発熱や精神状態の不安定さ、失神、嘔吐、身体の痛みなどがあります。

・Infusion reaction(急性輸液反応)
点滴投薬時に出現するとされている症状の総称です。主な症状に発熱、高血圧、低血圧、悪寒、発疹、過敏症、震え、呼吸困難などがあります。これらの症状は投薬から24時間以内に出現するとされています。



「免疫チェックポイント阻害剤」は、自身の免疫機能を高めてがん細胞を攻撃するという、それまでの抗がん剤等とは違う作用機序を持つお薬です。しかし、やはり「薬」ですから、その作用機序により、自分自身の細胞までも攻撃してしまうことがあるため、副作用の症状はあります。過去には、副作用による死亡例も報告されていますし、潜在的なリスクとして、過度の免疫反応、胚胎児毒性、心臓障害(心房細動、徐脈、心室性期外収縮など)、溶血性貧血も報告されています。
また、オプシーボ®による治療中は、自己の免疫力が高まっているため、ワクチン接種をした際に、そのワクチンの副反応が強く出てしまう場合があります。ワクチンそのものを「異物」として攻撃してしまうのです。生ワクチン、不活化ワクチン、インフルエンザや肺炎球菌を含む弱毒性生ワクチンなどは、主治医と相談しながら接種スケジュールを調整する必要があります。

それでも、これまでに無い作用が期待できること、他のお薬による治療よりも高い治療効果を得られる可能性があることなど、メリットもたくさんあります。現在のところ、保険適応となる疾患(がんの種類)は限られていますが、今後はさらに適応が拡大していくと考えられています。

がんの種類・適応拡大

オプジーボ®の適応は、2017年4月現在
・ 手術による治療が困難とされる皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)
・ 根治切除が難しい、あるいは転移性の腎細胞がんで、手術が困難とされる症例
・ 進行性、再発性の非小細胞肺がん
となります。

現在は、PD-1やPD-L1の他にも、免疫チェックポイントの分子として複数(10種類以上)の物質が、「免疫チェックポイント阻害剤」の作用機序による効果が期待できるといわれています。将来的には、
・ 消化器系の分野:食道がん胃がん、肝臓がん、大腸がん
・ 泌尿器の分野:腎臓がん、膀胱がん、尿路上皮がん
・ 婦人科の分野:乳がん、卵巣がん、子宮頸がん
などへの適応が拡大していくかもしれません。2015年12月時点では、頭頚部がんや悪性リンパ腫などへの効果が期待されており、現在も臨床実験が行われています。