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第2回 診断から治療までトータルな乳がん診療

長谷川 俊二 先生
診療練馬光が丘病院
乳腺外科 部長
■専門分野:乳癌、内分泌外科、消化器外科

Q&A

 乳がんの現状と貴院での傾向について教えて下さい。
 乳がんの治療成績は非常によくなりました。そういった背景もあって乳がんは他のがんと比べると治療が長期にわたることが少なくありません。また、乳がんは罹る年齢も他のがんと比べると若いという特徴があるのですが、当院は地域柄、高齢の患者さんが多いため、患者さんの平均年齢は他の施設よりも高い傾向にあります。


高齢者と若い方とでは治療法は異なるのですか?
高齢の乳がんの方は、ホルモンに感受性のあるタイプのがんが多いので、当院ではホルモン療法を受ける方が比較的多いのが現状です。しかし、中にはこのタイプではなく抗がん剤治療が必要な方もおられます。比較的からだに負担の少ないホルモン療法と比べて、抗がん剤治療は辛い治療になります。高齢の方の場合には、からだへの負担がかからないようにするため、ガイドラインを含めオーソライズされた治療を基本に患者さんの意向を加味しながら、ひとりひとりに応じた治療を行うようにしています。


 診断から治療、そして治療後の経過まで長年にわたってトータルで診ているとのことですが。
 乳がんは他のがんと比べると長期生存率も高く、長く経過をみていく必要のあるがんです。一般的な施設では、診断をする医師と治療を行う医師、そして経過を診ていく医師が異なることも少なくないと思いますが、当院では診断から治療、そして治療後の経過までを私がひとりで診ています。診断や治療で医師が変わると患者さんも不安に思うのではないかと思います。聞きたいことも聞けなかったり、自分の思いを誰に言えばいいのかわからず、気持ちを伝えなかったりということもあるのではないかと思います。その点、当院では診断の時点から関わっているので、患者さんの性格や置かれた状況などにも配慮して治療を行うことができるのです。医療はより専門化し細分化されていますが、トータル的に診ていくことで、患者さんの安心の度合いも高まるのではないかと考えています。 


 治療で大切にしていることは何ですか?
 治療を行う上で重視していることは、その方にとってベストな治療を行うということです。治療はガイドラインを基本に行いますが、患者さんによってそれぞれ治療への思いも異なります。そのため、患者さんのお話をじっくりと聞き、治療に対する希望などについても伺います。しかし、できるだけ小さく取ってほしいと希望されても、小さくすることでリスクが伴うようであれば、要望に沿うことはできません。高齢の患者さんの場合は自分でしこりを見つけて来られることも少なくありません。そのため結構腫瘍が大きいことが多いため、おのずと乳房切除術を行うことが多くなります。そういった場合においても、病状については隠さずにお伝えして、治療法を提案しています。無理なことは無理であると正直にお話するようにしています。何でも隠さずに正直に伝えることで患者さんからの信頼も得られるものと考えています。


 患者さんとのコミュニケーションを大切にしているとのことですが。 
 治療の後も経過を長く診ていくため、信頼関係の構築はとても重要です。時間を十分にとって患者さんのお話に耳を傾けるよう心がけています。特に高齢の方は遠慮して聞きたいことも聞けないということも少なくありません。そのようなことがないよう、何でも話ができる環境作りにも配慮しています。当院に着任して4年半になりますが、このような取り組みもあってか、前任地で診察していた患者さん200名ほどが現在も私を頼って受診されています。


 病院内でのチーム医療に力を入れているとのことですが。
 当院は高齢の患者さんが多いため、必然的に基礎疾患を持っているというケースが少なくありません。乳がんの手術は、肝臓や肺などの大きな手術と比べると多少の合併症はクリアできることが多いように思います。その背景には他科との連携、つまりチーム医療の体制が整っているということも要因のひとつといえるでしょう。例えば心臓が悪い場合であれば、循環器の医師の意見を聞いて、専門家と連携して手術を行うことで手術のリスク低減につながります。また、院内だけに限らず、地域のクリニックの先生方との連携も大切にしています。当院を受診される方は地域のクリニックから紹介されることも少なくありません。基礎疾患で血圧が高いといった場合には、血圧の管理はお任せすることはあっても、乳がんは専門的な知識が必要となるため、乳がんに関してはかかりつけ医には戻さずに当院で継続して経過をみるようにしています。


 乳がん治療で難しいと感じる点はどんなところですか?
 やはり確定診断が一番難しいと思います。確定診断は、最終的には病理診断で決まるのですが、その結果によって治療方針も変わってきます。画像上ではかなりあやしいと思っても、病理でがんと確定できない時などは悩みます。そういった時には何度か生検をやり直さなければなりませんが、最終診断が病理にあるというのは非常に悩ましいところです。


 今後力を入れたいことは?
 チーム医療は当然いま以上に体制を整えていきたいと考えています。それ以外としては、先ほどの話と重なりますが、やはり診断技術をさらに高めていきたいと考えています。


略歴

練馬光が丘病院 乳腺外科 部長。群馬大学医学部卒業。医学博士。日本外科学会専門医。日本乳癌学会認定医。マンモグラフィー読影認定医。超音波学会専門医など、多数。