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がんの遺伝(遺伝性腫瘍・家族性腫瘍)原因と予防

がんは遺伝するのか

2016年に公表された、国立がん研究センターの統計によると、がんで死亡する確率(累積死亡リスク)は男性25%(4人に1人)、女性16%(6人に1人)といわれています。平成 26 年(2014) 人口動態統計の年間推計では、死亡数は 126 万 9000 人で主な死因の死亡数は、第1位悪性新生物 37 万人(29.36%)と発表されました。

がんになる原因はさまざなものがありますが、中でもある家系の中で複数の人ががんを発症することを「家族性腫瘍」といいます。このうち、1つの遺伝子に病的な変異が起こり、それが親から子へ伝わることでがんを発症しやすくなることがあります。このメカニズムが原因で発症するがんを特に「遺伝性腫瘍症候群」と呼びます。つまり「がんは遺伝することがある」ということです。

現在、日本の医療において遺伝子変異によるがんを見つけることが可能なのは、家族性腫瘍の中でも特に「遺伝性腫瘍症候群」であるといわれています。例えば大腸がん(結腸がん+直腸がん)を例にとると、
● 生涯で大腸がんになるリスクは、男性は10%、女性は8%程度
● そのうち、およそ25%は「家族集積性」のがんである
● さらに遺伝性と考えられるがんは、大腸がんで亡くなる人のうちおよそ5%程度
といわれています。

発症に遺伝が大きく関連するがん

ヒトには元々、がんの発症を抑制する「がん抑制遺伝子」というものがあります。遺伝により発症するがんの多くは、この「がん抑制遺伝子」に、生まれつき異常がある(変異している)ことにより、発症するといわれています。

しかし、「がん抑制遺伝子」は他の遺伝子と同様、一つの細胞に父親由来のものが一つ、母親由来のものが一つ、あわせて二つありますから、そのうちの一つが生まれつき変異していても、すぐにがんを発症するわけではありません。例えば自転車のブレーキを思い浮かべてください。自転車のブレーキは、前輪と後輪にそれぞれ一つずつ、合計二つあります。もし自転車で走行中に片方が壊れてしまっても、もう片方のブレーキがしっかり機能すれば、自転車は何とか止まることが出来ます。しかし最初から片方のブレーキが壊れている場合、何らかのきっかけでもう片方が壊れてしまうと、自転車は止まることが出来ずに暴走します。これと同じことが細胞でも起きる可能性があります。

細胞の中にある「がん抑制遺伝子」のうち、片方に生まれつき異常がある場合、もう片方が壊れずに機能していればその細胞はがんになりませんが、何らかのきっかけでもう片方が壊れてしまうと、細胞自体が変異してがん化しようと暴走を始めます。

もちろん、「がん抑制遺伝子」が二つとも正常な状態で生まれたとしても、加齢や生活習慣など様々な要因により、「がん抑制遺伝子」が二つとも変異することはあります。しかし生まれつき「がん抑制遺伝子」が変異している人は、すでに一つのブレーキが壊れた状態から人生をスタートすることになってしまうのです。

非遺伝性腫瘍と遺伝性腫瘍

以下に、主な遺伝性腫瘍の例を挙げます。

リンチ症候群

リンチ症候群は、遺伝性非ポリポーシス大腸がん(hereditary non-polyposis colorectal cancer、HNPCC)ともいいます。発見者のLynch博士の名前からこう名付けられました。
リンチ症候群は、大腸がん全体のうち、2~3%程度の頻度で発症すると考えられており、大腸がんを発症する平均年齢は45歳前後です。一般的には、大腸がんの好発年齢は65歳前後ですから、それよりも若く発症します。

リンチ症候群は最初「大腸がん」と診断されますが、次のような条件がそろうと「リンチ症候群」が疑われます。リンチ症候群に対する国際的な研究グループ、ICG-HNPCC(the International Collaborative Group on Hereditary Non-polyposis Colorectal Cancer)が、1990年に「リンチ症候群の診断基準」として「アムステルダム基準」を発表しました。その後の1998年に、大腸がん以外のがんを含めた評価基準として「アムステルダム基準Ⅱ」を発表しています。現在ではこれがリンチ症候群の診断基準とされています。

【アムステルダム基準Ⅱ】 Vasen HF, et al Gastroenterology: Vol.116: p1453-1456, 1999
血縁者に3名以上のHNPCC※1がん(大腸がん、子宮内膜がん、小腸がん、腎盂・尿管がん)に罹患しており、かつ、以下のすべての条件に合致していること。
1. 罹患者のうちの1名は他の2名の第1度近親者(親、子、きょうだい)であること
2. 少なくとも継続する2世代にわたって発症していること
3. 少なくとも1名は50歳未満で診断されていること
4. 家族性大腸腺腫症が除外されていること
5. がんが、病理検査により確認されていること
※1 HNPCC:遺伝性非ポリポーシス性大腸がん

ただし、注意すべき点は、「診断基準を満たしているかどうかで、リンチ症候群であると結論付けることはできない」という点です。リンチ症候群であるかどうかは、やはり遺伝子変異の有無を調べる検査が必要となります。

リンチ症候群のスクリーニング検査として、マイクロサテライト不安定性(MSI)検査があります。これは、がん細胞と正常な細胞を用いて行う検査で、公的医療保険で受けることが出来ます。リンチ症候群は、4つの遺伝子のうち一つに変化があることが分かっており、MSI検査の結果が陽性だった場合は、さらに詳しい遺伝子検査を行います。

仮にリンチ症候群と診断された場合、その血縁者の方であれば、がんを発症していなくても、がんができやすいかどうか、遺伝子検査を受けることができます。現在は、MSI検査が実施できる施設も増えています。

家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)

これは、familial adenomatous polyposis(FAP)とも呼ばれ、遺伝性大腸がんの代表ではありますが、頻度としてはリンチ症候群よりも低いです。おおよそですが、全大腸がんのうち1%以下、出生約17,000人に一人の割合で、遺伝子変異が起きているといわれています。 一般的には、大腸に100個以上のポリープが見つかることでFAPが疑われますが、場合によっては大腸に5,000個以上のポリープが出来ている人もいます。100個に満たない場合でも、軽症型のattenuated FAP(AFAP)かもしれません。

FAPの場合、腺腫とよばれるタイプのポリープが多発しますが、これはがん化しやすいという性質があるため、予防的に大腸をすべて摘出することがあります。また、FAPでは大腸以外にも、さまざまながんや腫瘍が発生することがあります。

● 上部消化管(胃や十二指腸など)の多発性ポリープ・がん
● デスモイド腫瘍
● 甲状腺乳頭がん
● 骨や歯の異常
● 網膜の色素変性

遺伝性乳がん・卵巣がん

これは、同じ家系の中に乳がんや卵巣がんを発症する人が集積するもので、原因遺伝子としてBRCA1、BRCA2 の2種類の遺伝子があることが分かっており、主に母親との関係がポイントとなります。例えば、

● 母親が乳がんを発症した場合、娘の発症リスクは一般のリスクの約2倍
● 母親と姉が発症した場合には、妹の発症リスクは一般のリスクの約4倍
であるといわれています。

遺伝性乳がん・卵巣がんの特徴として、
● 家系内に複数の乳がん・卵巣がんを発症した人がいる
● 40歳未満で発症する(若い)
● 片方に乳がんを発症した場合、反対側の乳がんまたは卵巣がんも発症する場合がある

というものがあります。また、BRCA 遺伝子変異がある時、男性でも乳がんを発症する可能性が高くなりますし、前立腺がんになる可能性も一般の人より高くなります。

仮に、BRCA1/BRCA2 の遺伝子に変異が見つかった場合、アメリカではがんの検診だけではなく、薬による予防や、乳腺や卵巣・卵管などの「予防的切除」が行われることがあります。しかし日本の場合、基本的には「健康な(未発症の)乳房を切除する」ことに関しては、保険での治療はできません。しかし最近の研究により、遺伝性乳がん・卵巣がんであることが分かっている場合「乳がんの手術時に、反対側(がんがない方の乳房)を切除すると(リスク低減乳房切除術といいます)生存率が改善するというデータがあります。実際に、いくつかの医療機関ではこの「リスク低減乳房切除術」を受けることができますが、現在のところは自費診療となります。

リー・フラウメニ症候群

リー・フラウメニ症候群は、常染色体優性遺伝による非常にまれな遺伝性腫瘍で、世界でも400家系に満たない程度が報告されており、日本では難病に指定されています。原因となるのは「TP53(p53ともいう)」と呼ばれるがん抑制遺伝子です。脳腫瘍、乳がん、肉腫、副腎皮質腫瘍、白血病など多くのがんが多発するほか、胃がん、大腸がん、肺がんも発症する頻度が高いといわれています。

リー・フラウメニ症候群の場合、30歳までに50%、60歳までに90%以上の人が、がんを発症します。がん治療法の一つである「放射線治療」による発がん感受性が高いと考えられており、治療方針を決めるときのポイントになります。

網膜芽細胞腫

網膜芽細胞腫そのものは、出生数15,000~20,000人あたりに一人の割合で発症するがんです。このうち、両眼性のケース(網膜芽細胞腫のおよそ3分の1)の全てと、片眼性のケースのおよそ10%程度は、遺伝性の症例です。

遺伝性である場合、ほとんどのケースは5歳ごろまでに網膜芽細胞腫を発症し、さらに骨や筋肉の肉腫なども、発症することがあります(二次がんといいます)。

早期発見・早期治療により、視力や眼球を温存できる可能性が高くなるという特徴があります。

仮に、家系において遺伝子の変異が確認できているならば、臍帯血(さいたいけつ)などの遺伝子検査により、変異した遺伝子の保因者かどうかがわかります。遺伝性腫瘍が疑われる場合は、出生後早期に、眼底の検査を始める必要があります。

遺伝性のがんかもしれないと思ったら

遺伝性腫瘍症候群が疑われたら、まずは遺伝カウンセリングを受けましょう。遺伝カウンセリングでは、次の様な事柄について相談することができます。

● 遺伝子検査を受けるべきなのか
● 受けるとしたら、いつ頃が適切なのか
● 検査での発見率や正確さはどのくらいなのか
● 検査で分かることは何か
● 検査結果により、だれにどれくらいの影響が出るのか
● 子どもや家族も検査すべきなのか
● 自分にできやすいがんは何か
● がんの予防法は無いのか

などです。また、自分自身の人生設計として、家族関係や就職、結婚・出産などに関する問題が出てくるでしょう。自分自身の遺伝子の状態を正しく理解し、治療方針などは主治医と十分に話しあいながら、最終的には自分で決める必要があります。そのための準備として、遺伝カウンセリングを受けると良いでしょう。

遺伝子検査とはどのような検査なのか

特に、遺伝性腫瘍かどうかを調べる遺伝子検査は、他の検査には無い特徴が二つあります。一つは「一度出た結果は、生涯変わることが無い」という点です。つまり、将来的に発症するがんについて知り、予防策を立てることができます。

もう一つは「検査結果は、自分だけではなく自分の家系全体(親、兄弟姉妹、子ども)に影響する」という点です。仮に自分の「がん抑制遺伝子」に変異が見つかった場合、血縁者は50%の確率で遺伝子変異が起きていることになります。

非遺伝性腫瘍と遺伝性腫瘍

今現在がんを発症していなくても、自分の家系が「がんを発症する可能性が高い」ことが分かれば、自分自身への予防策と同様、家系全体での予防策を考えることができます。

実際の遺伝子検査は、およそ10~15mlの血液を採取して行います。血液中に含まれる「白血球細胞」から、遺伝子の本体である「DNA」を取り出し、遺伝子の変異がないかどうかをチェックしていく検査です。

ヒトの細胞には、細胞一つあたりおよそ2万種以上の遺伝子が存在しています。遺伝子のもつ遺伝情報は、すべてたんぱく質の基礎となるアミノ酸を構成する、4つの「塩基」とよばれる物質の配列により決められています。遺伝子変異が起きているということは、このアミノ酸配列が正常ではないということです。例えば遺伝性乳がんの場合はおよそ6000個の塩基配列を、家族性大腸腺腫症の場合はおよそ9000個の塩基配列をチェックする必要があります。また、4つの塩基の並び方は正常に見えても、ブロック単位で「必要な場所に必要な塩基が並んでいない」こともあります。これを一つずつチェックしていきますので、非常に多くの時間と手間を要する検査です。

まとめ

今現在、遺伝性腫瘍の遺伝子検査を行える施設は限られていますし、遺伝子検査の結果には限界があります。また、検査結果は一個人だけではなく、家系全体への影響が大きな情報であり、その後の人生設計にも影響する部分があります。遺伝子検査は、専門家の意見を元に、遺伝カウンセリングの体制が整った施設で受けることになります。

もしも「遺伝性腫瘍」かもしれないと思ったら、まずは主治医と十分相談した上で、適切な施設において遺伝子検査を受けましょう。

参考

がん研有明病院 がんと遺伝:http://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/heredity/relationship.html
国立がん研究センター がん情報サービス 遺伝性腫瘍・家族性腫瘍:http://ganjoho.jp/public/cancer/genetic-familial/index.html
北海道大学病院 「がん遺伝子診断外来」開設のお知らせ(患者の皆様・医療関係者の方へ):http://www.huhp.hokudai.ac.jp/hotnews/detail/00001144.html#a2_1
国立がん研究センター 堺市市民講座 もし、がんになったら?-早く見つけて楽に治そう!:-http://www.ncc.go.jp/jp/cis/project/pub-pt-lib/files/20150418_01.pdf
国立がん研究センター がん情報サービス がん登録・統計 最新がん統計:http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
難病情報センター リ・フラウメニ(Li-Fraumeni)症候群とその類縁症候群(平成23年度):http://www.nanbyou.or.jp/entry/2243

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